論考

【海外事例解説】AIはどんなホテルを選ぶのか?世界の大規模リサーチ解説

小林実可子
CHILLNN. Inc
Cloudbeds AIホテル推薦調査のサムネイル。手と星のイラスト。

[ この記事でわかること ]

  1. 1

    Cloudbeds社による世界規模の「AIのホテル推薦」調査の要点

  2. 2

    Cloudbeds社が提唱する、ホテル向けAIO戦略の骨子

  3. 3

    日本市場ではグローバル調査の結論がそのまま当てはまらない可能性がある理由

サマリー

2025年、150カ国で使われるホテル管理システム「Cloudbeds」が、生成AIによるホテル推薦ロジックについて世界初の体系的な調査を行いました。その結果、生成AIはそのホテルがオンライン上でいかに信頼されているかを総合的に評価して選んでいることがわかりました。

AIに推薦されやすいホテルに共通していたこと

  • OTAへの充実した掲載
  • 自社ウェブサイトの保有
  • 高水準の口コミ評価
  • ブログ・YouTube・Redditなど多様なチャネルへの露出
  • ブランドホテルであること

一方で、この発見は日本市場にはそのまま当てはまらない可能性があり、日本市場に特化した検証が必要だと考えられます。

AIによるホテル推薦が、旅行者の情報収集を変えつつある

旅行計画にAIを使う旅行者が急増しています。Booking.comの大規模調査では、3人に2人はすでに旅行の何らかの場面でAIを利用しており、89%が「AIを将来の旅行計画に使いたい」と答えています([Booking.com, 2025](https://news.booking.com/bookingcom-releases-the-global-ai-sentiment-report/))。また米国では、旅行・レジャー・ホスピタリティサイトへのAIソースからのトラフィックが、約7ヶ月で1,700%増加したと報告されています(Adobe, 2025)。

このユーザー行動の変化は、すでにWeb検索トラフィックの減少としても表れています。Tank社の分析では、AI検索が導入された1年間で、ホスピタリティ業界の月間オーガニックトラフィックが全業界の中で最大の落ち込みとなったとされています(Tank, 2025)。AI Overviewが表示されるクエリでは、オーガニックCTRが約1年で61%減少、有料広告のCTRは68%低下したという分析もあります(Seer Interactive, 2025)。

AIは多くの場合、外部リンクの引用よりも直接テキストで回答することを好みます。企業がSEO対策に注力し検索結果の上位に表示されていたとしても、AIトラフィックによって消費者に届かなくなっている可能性があるのです。

一方日本でも、生成AIによる情報検索は1年で約3倍に急増しており([JTB総合研究所, 2025](https://www.tourism.jp/tourism-database/survey/2025/12/smartphone-2025/))、成長の速度は無視できません。旅行計画においてもAIは使われ、1,000人のうち生成AIを旅行計画に使用した人が32.6%、うち84.1%が「新たな発見があった」と回答した調査もあります([宿研, 2026](https://www.yadoken.net/archives/column/generative-ai-travel-planning-survey-2026))。同調査では、宿泊先探しを目的にAIを使った人のうち47%が実際に施設を訪問したと答えており、予約行動にもつながっているようです。

こうした状況の中で、2025年6月にひとつの注目すべきレポートが発表されました。

Cloudbedsが「世界初」の研究を発表した

オールインワンのホテル管理システムとして150カ国の宿泊施設に使われているCloudbeds。同社が2025年に公開した「The Signals Behind Hotel AI Recommendations(ホテルAI推薦の背後にあるシグナル)」は、生成AIがどのようにホテルを推薦するのか、そのロジックを世界で初めて体系的に調べた研究です。

6つの都市(バンフ・ロンドン・バンコク・バルセロナ・カンクン・ニューオーリンズ)を対象に、主なAI Webサイトトラフィックを占めているChatGPT・Perplexity・Geminiの3つのAIに、計810プロンプトを投入して分析しました(2025年5月実施)。

AIに推薦されやすいホテルの5つの共通点とは?

調査結果から見えてきた「AIに推薦されやすいホテルの共通点」は、次の5点にまとめられます。

  1. OTAへの掲載が充実していること: 引用ソースの55.3%はOTA(TripAdvisor・Booking.com・Expedia など)。推薦された全145施設がTripAdvisorに、98%がBooking.comに掲載されていた。
  2. 自社ウェブサイトがあること: 推薦された全施設が自社サイトを持っていた。また引用の13.6%は施設やブランドの公式サイトだった。
  3. 口コミの評判が高いこと: 推薦施設の平均ゲストスコアは、TripAdvisorで4.4/5、Booking.comで8.6/10、Expediaで8.9/10など、いずれも高水準。レビュー数も1,200〜5,500と豊富だった。
  4. 多様なチャネルでの露出があること: 98%がYouTube(ユーザー生成コンテンツを含む)で紹介され、97%がトラベルブログに掲載、95%がRedditでも言及されていた。
  5. ブランドホテルであること: AIに推薦された物件のうち72.4%がブランド・グループホテルだった。独立系ホテルより頻繁に表示されるだけでなく、表示された際のランクも高かった。

これら5つの発見から言えるのは、「AIは検索キーワードだけでなく、そのホテルがオンライン上でどれだけ信頼されているかを総合的に判断している」ということです。

Cloudbedsのレポートが推奨するホテルのAIO戦略とは?

Cloudbedsのレポートが示した原則には、市場を問わず有効な部分があります。たとえば下記のような要素は、日本市場においても基本的な方向性として参照できます。

  1. OTAの掲載情報を整備する: 施設説明・最新の写真・アメニティ情報・FAQの正確さが、AI引用の際の基本条件になります。主顧客がインバウンドの場合、英語表記も優先度が高い可能性があります。
  2. 自社サイトをAIが参照しやすい構造に整える: 自社サイトがあるだけでなく、情報の構造も重要です。情報がよく構造化され、定期的に管理・更新されたサイトはAIによる発見可能性を高めます。
  3. 口コミ・レビュー管理に注力する: ゲストにレビュー投稿を促したり、レビューへの返信、さらにレビューを分析しコンテンツに生かすことも重要です。
  4. 多様なデジタルプレゼンスを高める: YouTubeや旅行ブログ、Instagramでの露出は、直接AIに引用されなくても、重要な情報とみなされている可能性が高いです。全タッチポイントで一貫したブランドメッセージを打ち出すことも必要です。
  5. 独立ホテルはユニークさを発信する: 調査ではブランドホテルの方がAI推薦に有利という結果が出ましたが、独立系ホテルもユニークさに焦点をあて、上記のようなコンテンツを用意することでAI可視性が高まると結論づけています。

日本市場に特有の観点

Cloudbedsのレポートは大変有益で、宿泊業のデジタルマーケティングを考える上で参照価値の高い調査です。ただし、日本市場への適用を考えると、いくつかの点で留保が必要です。

論点①:引用されたOTAが日本の流通環境と異なる可能性

Cloudbedsの調査で最も多く引用されたOTAは、TripAdvisor、Booking.com、Expediaの順でした。しかし日本では、国内旅行者が主に使うOTAはじゃらんや楽天トラベルです。これらのプラットフォームがどのように引用されるか、現在の調査データからは分かりません。

論点②:日本の宿泊施設は独立系ホテルが選ばれやすい可能性

本調査と対照的な大規模調査データとして、25都市中、東京の独立系ホテルへのリンク率が75%であり、また生成AIの全モデルがホテルへの直接リンクを優先(75〜90%)したというデータがあります(Hotelrank.ai, 2026)。国や都市の特性によって推薦結果が大きく変わる可能性を示唆しており、日本のホテルに特化した分析をする価値があります。

論点③:日本語コンテンツとAIの学習データの非対称性

AIが情報を引用する際、その源泉はウェブ上に存在するコンテンツです。英語圏のホテルでは英語のレビュー・ブログ・フォーラムが膨大に存在する一方、日本のホテルについて書かれた英語コンテンツは相対的に限られています。日本語のブログやOTA・まとめサイトのコンテンツをAIがどの程度参照しているかは、現時点では十分に明らかになっていません。

「どのOTAを、どの言語で、どのプラットフォームに向けて整備するべきか」という問いに対して、グローバル調査だけでは日本市場に適合する答えを導き出すことができないのです。

日本の宿泊施設の場合はどうなのか——独自調査

では、日本市場ではAIに参照されるためにはどの情報をどのように提供すべきなのか。CHILLNN AIO Labでは、日本の6都市・3つのAIプラットフォーム・500以上のプロンプトを投入した独自の調査を行いました。結果は下記のレポートをご参照ください。

FAQ — よくある質問

Q

日本のホテルもまず、Cloudbedsレポートの示唆を実践すべきですか?

基本的な方向性は日本でも有効だと思います。特に「自社サイトの充実」「口コミへの丁寧な返信」「多様なプラットフォームへの露出」は、AI推薦に限らず集客全般に効果があります。ただ、展開すべきプラットフォームなど日本市場固有の要素もあると考えます。

Q

独立系ホテルはAIに推薦されにくいのですか?

Cloudbedsの調査では「ブランドホテルが有利」という結果が出ましたが、同社は独立系ホテルの引用も25%以上あり、ユニークさを打ち出すことでAIからの可視性と信頼性を獲得できると結論づけています。また、日本の都市でも独立系ホテルが本当にAIに推薦されにくいのか、推薦されやすい独立系ホテルの特徴などはさらなる調査が必要です。

Q

小中規模のホテルはAIに推薦されにくいのですか?

Cloudbedsの調査結果を踏まえるならば、OTA掲載やサードパーティーコンテンツの少ない小中規模の施設はAI検索により不利になる可能性があります。ただしCHILLNN AIO研究所は、ニッチなプロンプトの場合、個性を強く打ち出している小中規模施設が引用される可能性もあると考え、調査を進めています。

引用文献

  • Cloudbeds: The signals behind hotel AI recommendations (2025年) — cloudbeds.com
  • Adobe Analytics: Traffic to U.S. retail websites from Generative AI sources jumps 1,200 percent (2025年3月) — blog.adobe.com
  • Tank: The Google AI Search Shift Report (2025年10月) — tank.co.uk
  • Seer Interactive: AIO Impact on Google CTR (2025年11月4日) — seerinteractive.com
  • Booking.com: The Global AI Sentiment Report (2025年7月) — news.booking.com
  • JTB総合研究所: スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査 (2025年12月) — tourism.jp
  • 宿研: 旅行計画での生成AI活用実態 (2026年2月) — yadoken.net
  • Hotelrank.ai: How AI Recommends Hotels: 2026 Index (2026年1月) — hotelrank.ai

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