日本語でのAIO対策は、インバウンド客に届くのか
「AIでホテルを調べる旅行者が増えている」この傾向はさまざまな調査で明らかになってきました(Booking.com、2025、宿研, 2026 など)。
しかし、前回の調査を進めながら私たちが気になっていた問いがあります。
AI検索の言語によって推薦されるホテルは変わるのか。
もしそうであれば、日本語のAIO対策をどれだけ磨いても、別言語でAIに尋ねるインバウンド客にはホテルが表示されない可能性があります。
そのためAIOラボでは、初めて多言語クエリによる比較調査を実施しました。
対象は「京都のホテル」。日本語の前回調査(CHILLNN AIO Lab, 2026)と同じ3タイプのクエリを、ハングル・繁体字(以後、韓国・台湾と表記します)に翻訳して投入し、推薦ホテルと引用ドメインを日本語の結果と比較しました。
調査
調査期間:2026年3月〜4月の10日間
対象言語:ハングル(韓国を想定)・繁体字(台湾を想定)、日本語(対照群)
プロンプト:
分析内容:
- 分析1:言語別でAIに一度以上推薦されたホテル
- 分析2:言語別でAIに2プロンプト以上で推薦された引用ドメイン
- 分析3:AIに5回以上推薦されたホテル(AI◎OTA×)が、韓国・台湾上位3位のドメインで掲載されている割合(カバー率)
※OTA含む大規模マーケティングの影響を抑制するためにAI◎OTA◎を除外。詳しい区分については前回調査をご参照ください(CHILLNN AIO Lab, 2026)
結果1. 推薦ホテルの63%が「外国語でのみ」登場していた
韓国・台湾または両方のクエリで推薦され、日本語では一度も推薦されなかったホテルは105施設中66施設。つまり、調査対象の推薦ホテルのうち63%は、日本語検索では現れない「外国語専用」の推薦でした。
日本語のAI検索で表示されるホテルが、韓国・台湾からの旅行者のAI検索では別のホテルに置き換えられているという結果です。
言語別クエリで一度以上推薦されたホテル105施設のうち、日本語では一度も推薦されなかった割合左:韓国語/繁体字クエリでのみ推薦右:日本語でも一度以上推薦
※ 韓国語・台湾(繁体字)または両方のクエリで推薦され、日本語では一度も推薦されなかったホテルを「外国語クエリでのみ」と集計。
結果2. 言語ごとに、AIが信頼する情報源(ドメイン)が異なった
AIが複数のクエリで頻繁に引用したドメインを言語別に分析し、上位3位のドメインを抽出しました。
韓国・台湾両方で高引用:insidekyoto.com、trip.com、booking.com
ポイント:全国調査では出てこなかった京都特化の個人サイト(insidekyoto.com)が上位に
韓国語クエリで高引用:reddit.com、tistory.com、insidekyoto.com
ポイント:韓国の大手ブログプラットフォーム(tistory.com)が上位に
繁体字クエリで高引用:insidekyoto.com、reddit.com、jr-central.co.jp
ポイント:台湾独自の傾向は見られず、日本語で書かれたまとめサイト(JR東海ツアーズ)が上位に
※booking.com(海外大手のホテル予約サイト), reddit.com(海外大手の口コミサイト)は前回調査と同傾向のため分析を割愛
結果3. 情報量があってもAIに引用されないサイトがあった
台湾には、「PIXNET」という韓国の「tistory」のような大手口コミ・ブログサイトが存在します。しかし、AIには今回の調査で一度も引用されませんでした。
原因を探るために、本調査でAIに5回以上推薦されたホテルが、各ドメインでどれほど掲載されているか調べました。
その結果、PIXNETに掲載されている京都ホテルのカバレッジ(網羅率)は86%であり、tistoryの88%と同等の情報量でした。また、韓台共通でよく引用されたinsidekyoto.comのカバレッジは62%と2つのブログサイトよりもカバレッジが低い結果となりました。
AIに5回以上推薦されたホテルの、各サイトにおけるカバー率(掲載割合)※ 本調査でAIに5回以上推薦されたホテル集合に対し、各ドメイン上で言及・掲載があるホテルの割合。
ここから、webサイトの情報量が多く網羅的であっても、AIに引用されるとは限らないことが判明しました。情報量だけでなく、サイトの構造やAIO対策の有無がAI引用に影響している可能性があります。
結論
「日本語でAIO対策をすれば十分」は、インバウンドには通用しない
本調査から下記のことが明らかになりました。
インバウンド客がAIに宿を尋ねたとき、日本語で培ったAIO対策は機能しない可能性があります。
今回の発見は、インバウンド依存度の高い施設にとって特に重要です。自施設が日本語AI検索で上位に表示されても、韓国・台湾からの旅行者がAIに尋ねた画面には、まったく別のホテルが並んでいる可能性があるためです。
では、どこに情報を置けばインバウンドの使うAIに届くのか。
本調査から、韓国語圏のAIにはtistoryのような韓国発ブログメディアが、台湾語圏のAIには日本語・英語で書かれた質の高いまとめコンテンツがそれぞれ影響を持っていることが分かりました。
また、PIXNETの事例は別の問題提起をしています。大規模な口コミプラットフォームに情報が集まっていても、そのサイトがAIに「存在していない」と判断されれば、AI検索の情報はゼロです。情報の量だけでなく、AIが読み取れる形で情報が整理されているかどうか——その確認が、言語ごとのAIO対策の出発点になります。
宿泊施設が今できること
インバウンド向けのAIO対策を始めるにあたって、まず取り組みやすい3つのアクションを紹介します。
ステップ1:専門家による地域特化型メディアへのアプローチを検討する
今回の調査で、insidekyoto.comは韓国語・繁体字のどちらのクエリでも高引用されており、日本語検索でも上位に登場することが確認されました。京都のホテル・旅館は、まずこのサイトで自施設が掲載されているか確認してください。他のエリアでも、専門家による地域特化型メディアへのアプローチを検討する価値があります。
ステップ2:韓国ゲストが多い施設はtistory.comを調べる
tistoryは韓国の大手ブログプラットフォームで、今回の調査では韓国語クエリのAI引用ドメイン上位に入りました。tistoryで施設名(英語がおすすめです)を検索し、自施設が言及されているか確認しましょう。言及がない場合は、韓国語メディア・旅行ブロガーとのリレーション構築がAIO推薦につながる可能性があります。
ステップ3:AIが読み取れる「構造化された情報」を外部サイトに増やす
PIXNETの事例が示すように、情報量があってもAIが引用しないケースがあります。OTAや口コミサイトに掲載するだけでなく、そのサイトと掲載情報がAIが読み取りやすい形(明確な見出し・ホテル名・地名の組み合わせ・具体的な特徴の記述)で整理されているかどうかを意識することが大切です。
締め
今回の調査を通じて見えてきたのは、AIが言語ごとに「信頼する情報エコシステム」を持っているという事実です。韓国語圏と台湾語圏では、AIが参照するサイトも、推薦するホテルも異なります。そしてPIXNETの事例が示すように、情報がそこに「存在する」だけでは不十分で、AIに読み取れる形で「存在している」かが問われています。
ご自身の施設がAIにどう見られているか、気になりませんか?
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FAQ — よくある質問
Q
日本向けのAIO対策をしていれば、インバウンド客にもAIで推薦されますか?
今回の調査では、日本語で推薦されるホテルと韓国語・繁体字で推薦されるホテルが60%以上異なることが確認されました。日本語のAIO対策はもちろん重要ですが、それだけではインバウンド向けのAI推薦には対応できない可能性が高いです。ターゲットとする国籍に応じて、その言語圏でAIが信頼する情報源を確認し、自施設の情報が掲載されているかを把握することをおすすめします。
Q
インバウンドAIO対策として、まず何から始めればいいですか?
最初のステップは「自施設がAIに引用される情報源に掲載されているか」の確認です。今回の調査では、京都においては韓台共通でinsidekyoto.com、trip.com、booking.com、reddit.com の引用頻度が高く、韓国語クエリではそれ以外にもtistory.comが上位に登場しました。これらのサイトに自施設がどのように言及されているかを検索するだけでも、現状把握の第一歩になります。
Q
台湾向けのAIO対策は、韓国と同じ方法でよいですか?
今回の調査では、台湾語クエリのAIが信頼する情報源には台湾独自の傾向が見られず、日本語・英語で書かれた質の高いまとめコンテンツ(insidekyoto.comやJR東海ツアーズなど)が上位に入っていました。台湾の大手ブログサイトPIXNETはカバレッジが高いにもかかわらず引用されなかったため、台湾向けの対策は「台湾語メディアへの掲載」よりも、AIが読み取りやすい日本語・英語の信頼性の高いメディアへの掲載を優先するほうが現時点では有効である可能性があります。
参考文献
- Booking.com: The Global AI Sentiment Report(2025年7月)
- 宿研: 旅行計画での生成AI活用実態(2026年2月)
- CHILLNN AIO Lab: AIから推薦されるホテルとは?日本初の大規模リサーチ報告(2026年4月)
期間:2026年3月〜4月 / 対象:京都のホテルに関する日本語・ハングル・繁体字クエリ / AIOラボ調べ