言葉の定義
- AI推奨(推薦): AIからの回答において、ブランド名・店舗名が言及されることを指します
- AI参照:記事URLがAIからの回答の情報ソースとして使われていることを指します
調査の手順
ステップ1:調査設計
主要エリアを対象に、以下5種類のプロンプトを設定し、3種類のAI(ChatGPT, Perplexity, Google AI Overview)から推奨される飲食店を4/2~5/5の約1ヶ月の間集計しました。
- 調査に使ったプロンプト
- 札幌でジンギスカンが本当に美味しい店を教えてください
- 新宿で絶対に行くべきおすすめレストランを教えて
- 京都で一度は行くべきおすすめレストランを教えて
- 大阪のおすすめ焼肉店トップ5を推薦してください
- 福岡のおすすめラーメン店トップ5を推薦してください
- 利用したAI:ChatGPT, Perplexity, Google AI Overview
- 期間:4/2~5/5の間で1日1回ずつ出力
ステップ2:AI推奨店舗の集計
AI回答の中で言及された飲食店を集計。エリアごとに「推奨頻度の高い上位10店舗」を抽出しました。
ステップ3:対照群の設定
AIに推奨される店舗の特徴を浮かび上がらせるため対照群を設定しました。具体的には、Googleマップ上で各エリアをキーワード(例.「新宿 レストラン」)で検索したときに表示される上位60施設をピックアップしています。
ステップ4:3軸での比較分析
AI推奨店舗と対照群(GoogleMapに表示される上位60施設)を、以下2つの観点で比較しました。
- AIに頻繁に推奨される施設とされない施設で、Googleマップのスコアおよびレビュー数にどんな違いがあるのか?
- 分析①で分かったAIに推奨されやすい傾向を持つにも関わらず、AIに推奨されない施設はどんな特徴を持つのか?
調査結果
結果1. AI推奨店はGoogleのレビュー数と相関、スコアとは相関しない
掲載した図は、AIに推奨される上位10の飲食店と、Googleマップで表示される60の飲食店を、レビュー数(横軸)とレビュースコア(縦軸)でマッピングしたものです。
特に見てほしいのが、AI推奨される施設の中央値を示した赤い線と、Googleマップで表示される60の施設の中央値を示したグレーの線の位置関係です。
札幌・ジンギスカン
新宿・レストラン
京都・レストラン
大阪・焼肉
福岡・ラーメン
このマップから2つの傾向が読み取れます。
傾向①:レビュー数は右側(多い側)に集中
どのエリアにおいても、赤線がグレーの線よりも右側にあります。つまり対照群よりもAI推奨施設の方がレビュー数は多い傾向にあることがわかります。
傾向②:スコアでは上下にばらつき
一方で、レビュースコア(縦軸)については、赤線がグレーの線より上にあるエリアも下にあるエリアもあります。今回の調査範囲では、Googleマップのスコアとは明確な相関を示しませんでした。
この結果は、海外の先行研究と整合的です。AIによる飲食店推奨は「評価の高さ」ではなく「言及の多さ・話題量」と結びついている可能性が高いと言えます。
結果2. 外れ値の分析:レビュー数が多くても推奨されない店
ここからさらに踏み込んで、「レビュー数が多いのにAIには推奨されない店舗」の特徴を分析します。レビュー数だけでは説明できない要因を探るためです。
仮説は以下の2つです。
仮説A:Googleの口コミ対策によってレビュー数自体は稼げているものの、ウェブ上での幅広い露出ができていないのではないか
仮説B:AIがよく参照する記事への登場頻度が影響しているのではないか
ケーススタディ①:新宿エリア
新宿エリアには、AI推奨上位10位に入らないにもかかわらず、Google口コミ数がAI推奨上位店を上回る飲食店が2店舗ありました。
- 「火ノ丸」さん(レビュー数16,356)
- 「ショーグンバーガー 新宿総本店」さん(レビュー数13,863)
観点①:Web上の露出(検索結果数)はどうか
それぞれの店名をエリア名と組み合わせ(例:「新宿 洋食アカシア」)、ウェブ上で幅広い露出がされているかの指標としてGoogleの検索結果数を集計しました。
結果は、AI推奨されていない店舗のほうが検索結果数が多いケースもあるというものでした。つまり、単純なウェブ上の露出量とAI推奨頻度には明確な相関はないことがわかります。
観点②:AIがよく参照する記事への登場頻度
続いて、今回のプロンプトでAIがよく参照した上位10記事への登場頻度を調べました。参照上位記事の大半は「新宿 おすすめ ディナー」のようなまとめ記事でした。
明確な差が出ました。AI推奨上位の店舗はいずれも、よく参照されるまとめ記事に登場している一方、レビュー数が多いだけの店舗は0回でした。
ケーススタディ②:札幌エリア
同じ分析を札幌エリアでも行いました。レビュー数が多いがAI推奨上位10位に入らない店舗として
- 「サッポロビール園」さん(レビュー数8,253)
- 「囲炉裏ジンギスカン 蝦夷羊」さん(レビュー数3,778)
を取り上げます。
観点①:Web上の露出(検索結果数)
新宿エリアと同様、検索結果数とAI推奨頻度には単純な相関はありませんでした。特にサッポロビール園は検索結果数が圧倒的に多いにもかかわらず、AI推奨上位には入っていません。
観点②:参照上位記事への登場頻度
「囲炉裏ジンギスカン 蝦夷羊」さんについては、上位参照記事への登場が1回のみと少なく、仮説B「AIがよく参照する記事への登場頻度が影響しているのではないか」と整合的です。
一方で「サッポロビール園」さんは記事への登場回数が多いにもかかわらず、AI推奨上位10位には入っていません(ただしAI推奨15位にはなっており、決して推奨されづらい施設とは言えません)。
このことから、「まとめ記事への登場頻度」はAI推奨に効く重要な変数ではあるものの、それ単独ですべてを説明できるわけではないことも示唆されます。料理ジャンル、価格帯、口コミの内容など、複合的な要因が絡んでいる可能性があります。
得られた示唆
本調査から、AIの飲食店推奨について以下の3つの示唆が得られました。
示唆① Google口コミ数とは正の相関、星の数とは相関しない
ホテル領域の先行調査と同様、飲食店においてもレビュー数(口コミの量)はAI推奨と相関を示しました。一方、レビュースコア(星の数)との明確な相関は確認できませんでした。
ただし、これはあくまで相関関係であることを示唆しているにとどまり、直接の因果関係を特定したものではありません。レビュー数が多いから推奨される、というよりは、「話題になっている店舗ほど、まとめ記事にも口コミにも登場しやすく、結果としてAIに発見されやすい」という構造があるのかもしれません。
示唆② 単純な検索結果数はAI推奨と相関しない
店名×エリアでの単純な検索結果数は、AI推奨頻度と相関しませんでした。検索結果が多くてもAIに推奨されない店舗は複数存在しています。
「ウェブ上にたくさん情報がある」ことと、「AIが推奨判断に使う情報源に載っている」ことは別物です。後者にフォーカスした露出戦略が必要だと考えられます。
示唆③ AIがよく参照する「まとめ記事」への露出が効いている
仮にGoogleの口コミ数が多くても、AIが該当のプロンプトで参照する記事への登場頻度が低い場合、AI推奨されづらくなる傾向が見られました。
ホテル領域の先行調査でも、AI参照ソースの多くが編集メディア(まとめ記事)・UGC・口コミサイトでした。飲食店についても、同じ構造——「第三者の声でどれだけ語られているか」がAI推奨を左右する——が成り立っていると考えられます。
今後の可能性
より「パーソナルなプロンプト」では結果が変わる可能性
従来の検索体験と比較したとき、AI検索体験の最大の特徴は、プロンプトをパーソナルに・自分のシチュエーションに特化させられることにあります。
例えば、「新宿で記念日に使える、個室があって日本酒の品揃えが良い和食店」「札幌で観光客が少なく、地元の人が通うジンギスカン」のような問いは、従来の検索では立てづらかったはずです。
しかし今回の調査で使ったプロンプトは、「○○のおすすめ飲食店」「○○で食事をするのに良いお店」など、いずれも王道なものでした。
仮にプロンプトをよりパーソナルなものにした場合、Googleのレビュー数や検索結果数といった「そのレストランがどれだけ有名か」以外の変数——例えば店舗の個性、特定シチュエーションへの適合度、独自のストーリー——に基づいて推奨される可能性があります。
この場合、有名店ではない個人経営の店舗にも、AI推奨されるチャンスが大きく広がります。
CHILLNN AIO Labでは、引き続きこの領域の調査を進めていきます。
FAQ — よくある質問
Q. レビュー数を増やせばAIに推奨されますか?
本調査ではレビュー数とAI推奨に相関が確認されましたが、これは直接の因果関係を意味しません。レビュー数だけ増やしてもAI推奨につながらない可能性があります。むしろ「話題になる店」「まとめ記事に取り上げられる店」となることの結果として、レビュー数も増えている、という構造の可能性が高いです。レビュー数単独を追うよりも、店舗の魅力を第三者に語ってもらえる施策——メディア掲載、口コミ管理、SNS連動——を組み合わせることが重要だと考えられます。
Q. Googleの星の数は意味がないということですか?
そうではありません。Googleの星の数は、ユーザーが実際にお店を選ぶ最終段階では依然として重要な判断材料です。今回の結果は「AIが推奨する飲食店の絞り込み段階」では星の数の影響が限定的だった、というものです。「AIに発見される」段階と「ユーザーに選ばれる」段階は別物として考える必要があります。
Q. 個人経営の小さな飲食店でもAIに推奨される可能性はありますか?
王道のプロンプト(「○○のおすすめ飲食店」など)では、まとめ記事への露出が大きく影響するため、メディア掲載のある有名店が優位になりがちです。一方で、ユーザーがよりパーソナルな条件(記念日・個室・特定の料理ジャンルなど)をプロンプトに含める場合、個性のある小規模店舗が推奨される可能性は十分あります。「自店ならではの魅力」を、AIが読み取れる形で第三者コンテンツに残しておくことが鍵になります。
Q. 飲食店のAIO対策、まず何から始めればいいですか?
3つのステップをおすすめします。①自店がAIにどう見られているかを確認する(ChatGPT・Geminiで実際に検索してみる)、②自店が掲載されているまとめ記事を棚卸しし、未掲載の主要メディアにアプローチする、③Googleマップの口コミに丁寧に返信し、第三者からの良質な言及を増やしていく——という順序です。
締め
「美味しいお店を探す」という行為は、雑誌から、検索エンジンへ、食べログへ、Googleマップへ、そしてAIへと変化してきました。そして今、「AIに発見される飲食店」と「されない飲食店」の差が、少しずつ生まれ始めています。
本調査で見えてきたのは、その差を生む要因が「星の数」ではなく「語られる数」——つまり口コミやメディアなど第三者がどれだけお店について書いているか——だということです。
数年後、ユーザーがAIに「今日のおすすめ、どこ?」と尋ねたときに、自店が候補に並ぶか並ばないか。その差を生むのは、今日から積み重ねる第三者コンテンツへの露出かもしれません。
CHILLNN AIO Labでは、宿泊施設に続き、飲食店領域でも調査と発信を続けていきます。